自己愛性人格障害の特徴や診断！パーソナリティ障害を噂されている有名人は？

あなたは、自己愛性人格障害という精神疾患を知っていますか？現在では、モラハラやパワハラという言葉が認識されてきているため、聞いたことがある人もいるかもしれません。

実はモラハラやパワハラの加害者には、自己愛性人格障害の人が多いと言われていて、他人と健全な関係を築くことが難しいことが問題となっています。

自己愛性人格障害は、ありのままの自分を愛せず、自分は他人よりも優れていて、特別な存在だと思い込んでしまうパーソナリティ障害の1つです。今や16人に1人が自己愛性人格障害者に当てはまると言われています。

今回は、そんな自己愛性人格障害とは、一体どんな特徴があるのか。また、その原因や接し方、診断テストや自己愛性人格障害を疑われている有名人についてまとめました。

自己愛性人格障害（自己愛性パーソナリティ障害）とは？

自己愛性人格障害とは

自己愛性人格障害とは、他人からの評価に対して過敏で、自己中心的であり、傷つきやすい一方、理想は高く、自分のことを過大評価していて、まわりからの注目や称賛を強く求めています。他人よりも自分が優れていると思い込んで誇示したり、うまくいかなくなると極端に落ち込み劣等感に苛まれるなど、相反する2つの人格を持ち合わせていることも、自己愛性人格障害の特徴と言えます。

自己愛性とは

人は、誰しも良いところと悪いところがあります。そんなありのままの自分を受け入れ、愛することを自己愛と言います。自己愛は、すべての人が持っているものであり、成長とともに未熟な状態から成熟していき、自分以外の他人にも愛情を注げるようになります。自己愛の発達が止まってしまうと、自己愛性人格障害になると言われています。

自己愛性人格障害の3つの特徴

自己愛性人格障害の特徴①　本当の自分を愛せない

自己愛性人格障害と聞くと、自分を大好きな人が抱える精神疾患というイメージですが、実際は、ありのままの自分を愛せないことが原因であると言われています。"ありのままの自分は愛されない"と思っているため、いつもまわりの意見に左右されてしまいます。歪んだ自尊心から感謝や愛情を求めるため、特別扱いしないと怒ったり、相手を責めることで精神の安定を図り、身近な人は、DV被害に遭うこともあります。"愛する自分は、誰よりも優れていて、特別な存在でなければならない"と考えているため、現実の自分との間にギャップが生まれてしまいます。

自己愛性人格障害の特徴②　承認欲求が非常に強い

自分が、他人より優れていることを誇示したいために、"自分だけ評価されたい"という欲求が非常に強く、注目されたり、人の上に立ちたいと考える人が多いです。自己愛性人格障害の人は、他人の意見に影響されやすく、"まわりからどう思われているか"をとても気にします。まわりに認めてもらえないと、自信がなくなったり、落ち込んだり、まわりを攻撃して心の平穏を保とうとします。自分の良い評価しか受け入れられず、少しでも批判されると、人格を傷つけられたと感じ、過剰に反応します。このように、自己愛性人格障害の人は、自分のことが大好きなように見えて、本当は自分自身を信じることができず、自分を嫌いになっているため、まわりからの評価を異様に気にするのです。

自己愛性人格障害の特徴③　強い劣等感

自己愛性人格障害の人は、理想の自分と本当の自分とのギャップにより、強い劣等感を感じています。自分が他人よりも劣っていると感じたり、自分は他人から愛されないと感じたときに、自分を守るために過剰に反応し、傲慢な態度をとることがあります。また、強い劣等感から横柄な態度をとって、自分の価値観を正当化したり、自分が特別な人間だと思い込むこともあると言われています。

自己愛性人格障害者には2つのタイプがある

自己愛性人格障害のタイプ①　自己完結型

自分は特別だと思っていて、他人から注目されたり、称賛されることを求めますが、他人には興味がなく自分のことしか考えていません。自分の思い通りにならなかったり、責められると、弱い自分を守るために激怒したりします。

自己愛性人格障害のタイプ②　他人依存型

"まわりが自分のことをどう思っているのか"をとても気にするため、まわりからの評価が良いと安心するのですが、そうでない場合、精神的に不安定になったり、気分が悪くなったりします。理想の自分と現実の自分とのギャップに悩み、自分自身を責め、落ち込むということを繰り返します。

自己愛性人格障害の原因

自己愛性人格障害の原因①　幼少期の両親との関係

過保護

幼少期の子どもは、理想の自分と現実の自分との違いを理解することができないため、成長の過程において、誇大自己は、当たり前にみられる発達段階の一部です。そして、成長とともに自己意識が目覚め、満たされたり、断念させられたり、まわりと比較することで発達し、正確な自己を理解していくと言われています。しかし、両親に過保護に育てられていると、過度に満たされ続けているため、成長しても誇大自己が心の中に残り続けて、理想と現実の差を受け入れられず、自己愛性人格障害になってしまう人もいます。

愛情不足

両親が子どもに無関心だったり、育児放棄や虐待を受けていると、"ありのままの自分では愛してもらえない"と理解し、人を信用できなくなります。また、ありのままの自分では愛してもらえない、自分は価値がないと脳に刻み込まれてしまっているため、間違った解釈をして理想の自分を描いたり、無意識に自分を守ろうとしてしまいます。このように、幼い頃に両親に受け入れてもらえなかったという経験から、自己愛性人格障害者になってしまう人もいるのです。

セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの不足

セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンの3つの神経伝達物質は、その量やバランスによって人の感情を左右すると言われています。セロトニンの分泌量が少ないと、マイナス思考でネガティブになりやすく、ノルアドレナリンの分泌量が共感性に影響し、ドーパミンの分泌量が少ないと、好奇心が少ないと言われています。この神経伝達物質が不足することで、バランスを保てなくなり、自己愛性人格障害になる可能性があると言われています。

自己愛性人格障害を疑われている有名人

自己愛性人格障害を有していたとされる有名人

ヘルベルト　フォン　カラヤン

ヘルベルト　フォン　カラヤンは、20世紀を代表する世界的な指揮者ですが、自己愛性人格障害を有していたとされる有名人の一人です。カラヤンは、メディアに掲載される写真を全て確認し、自分の認めた写真のみ掲載させるなど、自分の理想の姿が映し出されることを求めていたと言われています。また、カラヤンは、貴族階級出身を表すフォンをつけて名乗っていましたが、パスポートには、ヘルベルト　カラヤンとだけ記されていたそうです。少しでも意見を言われたり、従わない人には怒り狂い、徹底的に攻撃したとも言われています。

三島由紀夫

三島由紀夫は、戦後の日本文学を代表する作家であり、自己愛性人格障害を有していたとされる有名人の一人です。三島由紀夫は、選民意識を持ち、対人関係に過敏で、完璧主義者だったと言われています。祖母に溺愛され、母親とは情緒的なつながりを持ちにくかったため、幼少期はケガをしないようにと遊び相手はいつも女の子だけだったそうです。数々の傑作を生みだしましたが、40歳になると肉体的な老いを感じ、痩せ衰えることをとても恐れていたそうです。やがて、国家主義的な思想に自分のあり方を重ね、美しさを保ったまま自決により自らの命を絶ちました。

太宰治

太宰治は、昭和初期に日本を代表する作家であり、自己愛性人格障害を有していたとされる有名人の一人です。太宰治は、慢性的な脱力感や疎外感を抱えていて、不安定な時は感情のコントロールが難しく、芥川賞を逃したときの怒りは、正気の沙汰ではなかったと言われています。自我の内的な分裂によって、過剰な分離性を持つ自我を生み出し、自我を支えられなくなって自我の死を望み、存在の死と勘違いしてしまったのかもしれません。

自己愛性人格障害を疑われている女性有名人とその特徴

ここでは、過去に自己愛性人格を疑われた有名人女性の特徴を、いくかの例とともにチェックしていきます。

藤原紀香

藤原紀香さんは、慈善活動やボランティア活動に積極的に参加している有名人の一人で、カンボジアに学校をつくるなど、精力的に奉仕活動を行っています。

藤原紀香さんが、お笑い芸人の陣内智則さんと結婚することで、格差婚と報道され、全国からたくさんの称賛を寄せられていましたが、2年後には離婚。自分よりも立場の低い旦那さんに裏切られた屈辱もあったのか、かなりやつれてしまい、自尊心をひどく傷つけられていたように見受けられました。

自身の著書である「藤原主義」の中で"みんなに良い子に思われたいという願望がある"と指摘されています。梨園の妻になるには、家事を全てこなしながら後継者を養成し、後援会からの公認は必須です。

しかし、こなしていくことができれば、旦那さんや後援会だけでなく、世間の人からも称賛されることでしょう。ミスグランプリを受賞し、モデルや女優としても成功を収め、男性をたてる良妻。そんな藤原紀香さんが選ばれた人間だと錯覚してしまっても仕方ないのかもしれませんね。

豊田真由子

男性の秘書に対する罵倒や暴言の数々は、多くのメディアでも取り上げられ、鮮明に記憶が残っている人も多いのではないでしょうか。

男性秘書が、豊田真由子さんが出した食べ物を「これ以上食べられません」と断ると、「吐いてでも食え！」と怒ったそうです。作ったものを全部食べてほしいという気持ちはわかりますが、吐いてまでというのは、相手のことを全く考えておらず、自己中心的に感じてしまいます。

また、男性秘書から客観的な意見を言われるだけで、批判されたと感じて劣等感から攻撃的になってしまったのかもしれません。謝罪会見でも、「自分の弁護や擁護ばかり」と酷評されています。

自民党を離脱した後は、体調不良を理由に入院していましたが、強い劣等感が体調不良というかたちで表れてしまったのかもしれません。公人は、支持を集めることにより発言力が強くなるため、自分が特別な存在であると錯覚しやすいのかもしれませんね。

自己愛性人格障害は気づきにくい。その診断方法とは

"そういう人"と認識される

自己愛性人格障害を有していたとされる有名人でも紹介したように、自己愛性人格障害によって日常生活が困難になったり、自傷行為やうつ、心身症や不安障害など二次障害を引き起こすこともあります。実際に、二次障害の症状が出てから医療機関を受診するケースが多く、受診してから自己愛性人格障害だったと気づくことが多いようです。

自己愛性人格障害の特徴は、誰にでも少なからずありそうなものなので、"そういう人"とまわりから認識されていることが多く、本人も身近な人もわかりにくいのです。非常に分かりにくい自己愛性パーソナリティ障害の判断ですが、ある程度の予測をつける診断方法があります。

自己愛性人格障害の診断テスト

1.　自己の重要性に関する誇大な感覚。
2.　限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
3.　自分が"特別"であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人たちにしか理解されない。または関係があるべきだ、と信じている。
4.　過剰な賞賛を求める。
5.　特権意識。つまり特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを理由無く期待する。
6.　対人関係で相手を不当に利用する、つまり、自分自身の目的を達成するために他人を利用する。
7.　共感の欠如：他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない。またはそれに気づこうとしない。
8.　しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
9.　尊大で傲慢な行動、または態度。

DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の分類と診断の手引き　より

5つ以上当てはまると自己愛性人格障害の可能性があります。

パーソナリティ障害は診療所でも診断できる

自己愛性人格障害には明確な検査基準が存在しないので、その診断が決して容易なものではありません。しかし、パーソナリティ障害を診断するにあたって、その人がなぜそのような人格に至ってしまったのかという経緯を考えていくことで、その原因を紐解き、今の症状をより正確に診断し、治療するという事は可能です。

パーソナリティ障害の多くは、幼少期における、もしくは幼いころから今も続いている生活環境が及ぼす、周りの「自分にとって重要な人」との関係性が原因になっています。

自己愛性人格障害はこころの問題になるので、お医者さんに診断してもらう場合は、精神科や心療内科を訪ねることになります。

自己愛性人格障害の治療方法

薬物療法

自己愛性人格障害の基本的な治療方法は、カウンセリングになります。しかし、カウンセリングによる治療は、即効性がないため、ある程度の時間が必要です。そのため、症状の度合いによって薬が処方される場合もあります。自己愛性人格障害の治療には、以下の薬が用いられることがあります。

自己愛性人格障害の治療は、カウンセリングがメインのため、薬による治療は、一時的に症状を緩和する対症療法です。薬を飲んで治るわけではありません。

精神療法

自己愛性人格障害を治すためには、本人が"自己愛性人格障害を治そう"と治療に取り組まなければ改善できません。精神療法では、リラックスした状態でカウンセリングを受け、悩んでいることやトラブルについて思うままに話をしていきます。話が進むにつれて、内容は変化し、「なぜそう思うのか？」「なぜそんな行動をとったのか？」という無意識の部分を意識化させ、カウンセリングを繰り返すことで、自分を客観的に見れるようになります。

夫婦療法

自己愛性人格障害が原因となり、夫婦関係にトラブルが起きることがあります。どちらかが行き過ぎた自己愛や歪んだ自己を持っていると、突然不満やストレスが爆発して夫婦関係がうまくいかなくなってしまうのです。夫婦一緒にカウンセリングを受けることで、お互いを見つめ直すことは、良い夫婦関係を築くうえでとても大切なことです。

家族療法

家族療法は、家族全員に働きかけることによって改善を目指す治療法で、具体的には次の4種類の治療方法があります。

家族療法の対象者は家族全員ですが、患者ともっとも関わりが深いのは母親であることが多いため、カウンセリングは母親が中心になります。

自己愛性人格障害の人との接し方や対処法

自己愛性人格障害の人に嫉妬されるような行動は慎む

自己愛性人格障害の人は、負けず嫌いで嫉妬深いため、嫉妬されるようなことをしてしまった場合には執拗に攻撃される可能性があるため、正しい対処法を知り、接する必要があります。

自己愛性人格障害の人の要求を全てのまない

自己愛性人格障害の人は、他人は自分のために動いてくれる存在だと思っているため、思い通りにならないと怒り狂うこともあります。自分勝手な要求やお願いは、一度承諾するとどんどん面倒なことになる良くない対処法のため、しっかり断りましょう。

自己愛性人格障害の人の競争相手にならない

自己愛性人格障害の人は、誰でもライバルや競争相手として見てしまうところがあると言われています。ライバルや競争相手だとみなされた場合、攻撃的な態度をとられることもあるため接し方には気を付けたほうがいいでしょう。

自己愛性人格障害の人を追いつめる存在にならない

自己愛性人格障害の人は、敵か味方かという判断基準しかありません。もしも敵と判断されてしまうと、小さなことでも優劣をつけてきたり、あれこれ難癖をつけてきたり、仲間外れや陰口を言われるおそれもあります。

自己愛性人格障害の人を見下さない

自己愛性人格障害の人は、自己中心的な考えのため人付き合いが得意ではありません。対象法としてそのような人には共感をこめて接すると、あなたを味方と認識しトラブルが起こりにくくなります。

今よりもお互いにとって良い環境を築くために

自己愛性人格障害の特徴や診断テスト、その疑いがある有名人について紹介してきました。

自己愛性人格障害は、その態度とは裏腹に、本当の自分を愛せない未熟な自己愛が原因で発症するパーソナリティ障害の1つだということがわかりました。人間が幸せに生きるためには、心も体も健康でなければいけません。幼い頃にしっかりとコミュニケーションをとったり、スキンシップや愛情を注ぐということが、どれだけ心の健康やその後の人生に影響を与えるのかということを深く考えさせられました。自己愛性人格障害の人自身も社会生活が難しくなったり、生きにくくなり、またその身近にいる人も攻撃的な態度に疲れてしまったり、精神的に追い込まれてしまうかもしれません。

自己愛性人格障害の人の特徴や考え方、接し方を知っておくことで、今よりも良い関係を築くことができるかもしれません。自己愛性人格障害の人と接するときは、客観的に問題を捉えることが大切です。相談に乗ってあげたり、尊重したり、共感してあげることで、気持ちは落ち着き、「この人は自分を裏切らない」と認識すると、落ち着きを保つこともできるようになります。

自己愛性人格障害を治すということは、今まで築いてきた自分自身を見直すということなので簡単ではありません。本人が自覚して、「努力して治したい」と思わなければ効果もないため、まわりの協力は必要不可欠でしょう。少しでもお互いにとって良い環境になるように、相手の状況や立場を踏まえたうえで、相手の存在を認め共感してあげることから取り組んでみましょう。